たった一つ、一つだけ願いが叶うなら。

僕は迷わずこう言うだろう。


アノ人ヲ幸セニシテ下サイ


「ユウ、と申します」

貴方と出会ったのは絢爛豪華な座敷の上。
貴方は鮮やかな着物を艶やかに纏い、綺麗な綺麗な顔を僕へと向けた。

「……ユウ?」
「お侍様、この娘が我が店の看板です。……どうぞごゆるりとお休み下さいませ」

主人が下がった座敷には僕と貴方の二人きり。
貴方は伏せ目がちに畳を見つめている。

「………ユウ?」
「はい」

顔を上げた貴方は真っ直ぐに僕を見据えて。
僕はその瞳に凍り付いた。

切れ長の、それでも見る者を吸い寄せる、綺麗な目。

「……お侍様?」
「ん?ああ……、綺麗な、名前ですね…」
「ありがとうございます」

ゆっくりとお辞儀をした躯。
抑揚のない声。

冷たい、と思った。

「今日はいかが致しましょう?」
「…ああ、じゃあ……」



貴方は僕と距離をとる。
僕が貴方の名を呼ぶと、漸く貴方は僕に寄り添う。

貴方はいつも目を伏せて。
僕を真っ直ぐに見はしない。

貴方は僕に、
微笑すらくれないのだ。

ああ貴方は。
何て遠い人なんだろう。

「ユウ」
「…ユウ」
「……ユウ…」

僕は貴方を呼ぶ。
何度も、何度でも。

それでも貴方の返事はいつもと同じ。

「はい、何でしょうお侍様」

僕は貴方を愛してはいけないのでしょうか?
こんなにもこんなにも好きなのに。

やはり僕も、貴方にとってはただの客の一人なのでしょうか。
否、恐らくそうなのでしょう。

僕は貴方の本当の顔を見た事がない。

貴方をこの腕に抱く時でさえも、
貴方は僕に本当の姿を欠片も見せてはくれないのです。


「ぁ…っ、あぁん…ぉ、侍様…ァっ」
「……っ、ユウ…」

もどかしい。

涙を流す貴方の瞳は何処か虚ろで。
僕に抱かれる貴方はまるで人形のよう。

貴方の瞳は何も映してはいない。

何も。

「…っ!?ぁぁぁっ!だ…めです…!そこはァ、あっあァァ!」
「ユウは、ココが好きでしょう…っ?」
「ゃ、ア…ひぅっ、やだァ……!」

拒まないで。
僕を。

貴方に僕を受け止めて欲しいのに。

貴方は何故。
どうして貴方は。

「ユウ…大好きだよ……」
「……ぇ?」

好きなのに。
どんな男達よりも。
貴方を想っているのに。

「好きだ…誰よりも……」
「…お侍様……」

なのに貴方は。

「……やめようか」
「え…?」

貴方の細い躯を離す。
名残惜しくて、もう一度だけと口付けて。

「……ごめん」
「何か…お気に障る事でもありましたでしょうか…!?」
「………ううん」

人形の貴方。
僕は自分勝手な人間だから。
これ以上こんな貴方を見たくなくて。

これ以上。
傷付きたくなくて。

僕は心の狭い人間だから。

これ以上貴方を抱いても。
僕に残るのは虚しさだけ。

そんなの。
嫌だ。

だから。

「………ごめん」
「…今直ぐお帰りの用意を致します」

着物を直す貴方は冷たい人形。
その顔はいつもの無表情。

やはり僕は、貴方にとってはただの、
一人の客でしかないのですね。

「………ユウ」
「何でしょうか」

また、僕は此処へ来て良いのかな?

「お侍様が望まれるのなら」

ああ。
僕は。
人形に恋をしてしまった。

「ユウ」
「はい」
「好きだよ」
「ありがとうございます」

ああ。
貴方は。

「ユウ」
「貴方様は良く私の名をお呼びになるのですね」
「嫌かな?」
「……いいえ」

貴方は。
僕を。

人間として認めていますか?


終


戯言:花魁(?)ネタでアレ神でした;;
す、すみませんっ!パラレル大好きなので;
そんでもって痛すぎる話ですみません;;
ユウさんが激しくキャラ違いで(以下略)
アレです。お客さんだから敬語なだけで中身はあのユウさんなんです。(知るか)
そして続きますこの痛いシリーズ。
宜しければお付き合い下さい。


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