願い




このきれいなひとが、すべてぼくのものならいいのに。


「オイ、早く終わらせろよ」
「でもあまり急ぎ過ぎても…」
「良いっつってんだろ。さっさと終わらせてェんだ」
「……はい」

白いシーツの上に、長い黒い髪を散らして、僕に組み敷かれている綺麗な人。
その目は真っ直ぐに僕を見ていて。
僕はその目に射殺されそうになる。

「神田…」

見ていられなくて、瞳を閉じて細い首筋に口付けた。

本当は唇にしたいのだけれど。
それはしないのが最初に決めた約束。

あくまでも処理だけの関係だから。
あくまでも。

「……っ」

息を詰める喉は、声を漏らす事はなく。
眉が時折寄せられるだけで。

「テメ…、んなトコぁ良いんだよ…っ」
「すみません」

さっさと終わらせろ。
付き合ってやってんだからそれだけでもありがてェと思え。
毎回飽きも忘れもせず僕の耳へ入れてくれる言葉。

聞く度に自嘲の笑みが漏れる。
現実を感じる。

それでも、貴方に触れる事が出来るのなら。

「……ふ…、…ぅ…」

小さく跳ねる細い躯。
唇を噛んで声を殺す貴方。

「神田…」
「……っく、ぁ…」

びくりびくりと。
小刻みに揺れる躯。

でもその目は、僕なんて見ていない。

「声…、我慢しないで下さい」
「ざけ…ん、な…ァ」

更に唇を強く噛み締めて、僕を睨み付ける貴方。
ああ、切ないね。

「いれますよ」
「さ…っさと、終わらせろ……っ」

貴方の中に入るなんて、何て幸せな事だろうと思っていたけれど。

「ぅあ、あ…っぁぁっ、んぅ…っ」
「っ声、殺さないで…っ」

まるで僕という存在を拒絶するような貴方の中。
とても切なくて。

「…神田、神田……」
「ひぁ、んん…っ」

頭を振る貴方。
それは辛いの?
苦しいの?
僕を拒んでいるの?

「……かんだ…」
「く、ぅ…っ」

貴方が思いきり噛み締めた唇が、紅を引いたように紅く染まる。

「神田、血が……」
「る、せェ…」

紅を手の甲で拭う貴方の目は、やっぱり僕を射殺さんばかりで。
それでもじわりじわりと滲む紅に綺麗な眉が寄せられる。

「大丈夫ですか…?」
「こ…なもん、怪我の一つにも、入んね…ェだろうが…っ」

鼻で笑おうとして失敗したらしい貴方。
途切れ途切れの言葉に堪らなくなって。

「……っ?」

貴方の躯を離した。

「ど…した…?」
「すみません、約束破ります」
「……は…?」

顔を引き寄せて。
紅い唇に。
僕のそれを。

「……っ!」

重ねた。

鉄の味がするそれを丁寧に丁寧に舐めて。

「テ、メ…っ!」
「痛くないですか?」
「それより、も…と痛ェ事しといて、んな事、ほざく…じゃねェ…っ!」

真っ赤になって怒鳴る貴方。
きつい瞳はそこにはなくて。
自然と笑みが漏れる。

「すみません」
「っせェ!」

顔を逸らす貴方の髪を一掬いして。
好きだと言う代わりに、綺麗だと言った。


ぼくのものにならないかと、なんどもなんどもねがい、いのる。
どうか。
どうか。

このいとしいひとを。


終


戯言:ケータイサイトの千番キリリクでアレ神(裏有)でした。
かなり前の話です。死
うちの神田はどうしてもこんな人になっちゃいます…orz
もっと可愛げのあるユウたんも書きたいです。……無理ぽ…


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