「……あの、神田さん」

長い沈黙を破ったのは俺の方。
貴方には言わなければならない事が沢山ある。

「あの…」
「黙ってろ。疲れた」
「…はい」

帰りの汽車に揺られながら、貴方は流石に疲れた様子で。
ぐったりと背凭れに体を預けている。

普通の人間なら直ぐに病院に行かなければいけないような傷。
お座なりの手当てだけじゃ、かなり辛そうだ。
車掌や他の乗客が不信感の籠った目でじろじろ貴方を見るのはこの上なく気に食わない。

尤も、その視線の一部は自分にも向けられているとは思うけれど。

「………神田さん…席を変えましょう…。此処だと…」
「…………」
「………神田さん?」

返ってこない言葉に、不審に思って顔を覗き込む。
伏せられた瞼。
微かに聞こえる規則正しい呼吸。

「…………寝てる…?」

とても静かに。
その人は眠っていた。

この人でも人前で寝るんだなぁと思わず感心してしまう。
思わずじっと見つめてしまう。

普段から東洋人にしては白めの肌が酷く青白く感じて。
出血の所為だろうか。
穏やかな呼吸が聞こえていなければ、不謹慎だけれど死んでしまったと思っていたかもしれない。

「………すみませんでした…」

それ程までに貴方は戦っていた。
疲労仕切った寝顔は酷く儚い。

自分の行動がどれだけ愚かで、どれだけ貴方の負担となったのか。
後悔だけでは表す事の出来ない念が胸中に渦巻く。

「すみませんでした……」

礼も謝罪も、どれだけしても足りる事はないだろう。

それでもきっと貴方は許すのだ。
俺を突き放すような物言いで。

共に行動してそれが痛い程わかったから。
だから辛い。

こんなにも優しい人なのに。
こんなにも優しい人だから。

いっそ残酷な程に。
俺を許すのだ。

だから。

「ありがとうございます」

貴方が眠るこの時に。
謝罪と感謝を。



汽笛が鳴る。
ガタリと小さく車内が揺れて。
静かな空気が微かに振動する。

ああそこには、思わず見惚れてしまうような、強く美しい漆黒の瞳があった。


終


戯言:ゴズ神で死た。
小説出た時からずっと温めてたやつなんですが。爆笑
というか書出しから中盤にかけては当時書いたやつだったり。死
色々あって放置プレイでしたがこの機に完成させちゃおうかと思いまして。
短い上に今更感が漂ってますがorz
何か書き方がいつもと違う気がしない事もないな…
まぁいつもその時のテンション任せで書いてますが。吐血


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