桜。
あと数日もすれば満開になるであろう木々。

桜色の外の世界を、貴方にも見せたい。

貴方と見る桜はきっと、この世で一番素敵なのでしょう。


「…桜…、ですか?」
「ええ、貴方と一緒に見たいと思って…」
「此処のお庭にも咲いているではありませんか」

それではいけませんかと首を傾ける貴方。
でも。

「此処の庭の桜は一本だけでしょう。外はまるで桜色の海ですよ」
「そう……なのですか?」

数える程も外に出ていないと言う貴方。
貴方だからこそ、日に焼けるのを危惧されて、出させて貰えなかったのでしょう。

「海のような桜…」

あたしは海も見た事がないけれど。

「見てみとうございますわ」

貴方はよく笑うようになった。
はにかむような、不器用な、不器用な笑いだけど。
それがとても綺麗で。

とても好きだ。

そう言うと、貴方は頬を真っ赤に染めて、怒ったように横を向いてしまうけど。

その仕草も堪らなく愛しいと言ったら、貴方はまた怒りますか?

「では次の桜が咲いた時に…」
「次、ですか?」
「ええ」

二人だけで、ゆっくりいきましょう。
ゆっくり。
ゆっくりと。

「……夏になれば貴方と暮せる用意が出来ます。貴方さえ良ければ…」

僕と、共に来て頂けないでしょうか。



「………あの…」
「…はは、ちょっとクサ過ぎました?」

急にすみませんでしたと笑う貴方は、少し寂しそう。
肝心な時に、何も言えない自分は、本当に情けないと思う。

こんな事。
こんな幸せ。
こんな瞬間。
二度とないかもしれないのに。

「でも、本気ですから」

ああ、貴方はまた笑う。
屈託なく。
こんなに穢れた人形に向かって。

貴方と一目でも共に見れたのなら。
それはきっと何よりも綺麗な世界になる。

貴方と一瞬でも共に生きる事が叶うのなら。

「……今日は帰りますね」

また、返事を聞かせて下さい。

立ち上がる貴方。
この身は貴方を止める事など出来ない。

だから、ただ一言だけ。
一言だけでも。
貴方に。

「桜、楽しみにしておりますわ」

弾かれた様に振り返った貴方に、自然に笑みが漏れた。

きっと、今までで一番、花魁らしくない笑みが。


終

戯言:花魁シリーズの番外風にしたかったのになんか凄い事になりました;;
く、クサくてすみません……(滝汗)
勿論これもタイムリーネタでしたよあっはっは。死
もう何かもう痛い事は重々承知ですから。
大丈夫です生きてます。


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