そして今夜も



流れるままに身を任せ、流れ流され着いた先は、美しい絶望の世界でした。



足音を立てずに気配も残さずに。

すう、とその空間から湧き出たように。
俺はお前が寝息を立てる部屋に立った。

歩み寄り、闇の中だからこそより映えるその顔に、自分のそれを近付けて。

「何してんだテメー」

目の前にはこれ以上ない程吊り上がった眉と目。

「…………アラ、起きてたの」
「テメーの気配はなさ過ぎて逆に不自然だ」

淡々と言葉を紡ぐ綺麗な唇に、やっぱり場慣れしてるなと苦笑して。

「何しに来やがった。ストーカーかテメーは」
「人聞き悪い。通い夫って言ってよ」
「死ぬか?」

躯を起こし、どけよと俺の顔を手で払って、お前は軽く息を吐いた。

「何なんだよテメーは」
「ティキ」
「最初に来やがった時に聞いた」

鋭い眼光は、初めて会った時と比べたらかなり軟らかくはなっている。
それでも、どんな場所に居てもやって来る俺への不信感は全く拭えていないらしく、
脇には黒い刀が鈍く光っていて。
それとも常にそうしなくちゃいけないのか。

「何で俺の居場所がわかんだよ」
「んー…愛のチカラ?」
「答えになってねぇ」

俺の答えはいつも、肝心な部分を取り除く。
お前はそれにいつも苛ついたような顔をする。


お前を初めて見たのは一か月前。
街の中、人込みの中でも光る存在に、目も心も奪われた。

それから追いかけて追いかけて。
そっとお前の隣りにいられるように。

毎晩毎晩現れる俺に、お前はどんな存在を感じ取ったのかは良く分かる。
毎晩毎晩口説き文句を並べ立てる俺に、警戒心が無意識のうちに薄れていっているのも。

不思議な存在。

それで良い。
お前の前では。

本当の俺を知らないままで。
否、お前の前の俺が本当の俺。

白でも黒でもない、お前の為に生きている、本当の俺。

だから。

「好きだ」
「知るか」

数週間前から全く変わらない言葉のやり取り。

でも。
お前の肩を抱く俺の腕。
俺の腕に抱かれるお前の肩。

確実に変わってきている。

「なぁ」
「何だ?」
「俺と居て楽しい?」
「さあな」

そう言いながらも、お前は俺に躯を預けてくれる。

俺はお前だけしか知らない不思議な存在。
お前だけのティキ。

それ以外の何でもない。

「……ティキ」

俺を見上げる切れ長の瞳。

「何?」

お前はアクマなんかじゃないよな。

「……突然何?」
「…いや、わかんねぇなら……」
「違うよ」

俺はアクマじゃない。

「……そうか」
「何?お前悪魔なんか信じちゃってる訳?」
「…信じてねぇ。言ってみただけだ」

一人ごちるように呟き、再び躯を俺に預けるお前に笑いかけた。

ああ、でも。
実感してしまった。
やっぱり道は交わらないんだ。

俺はずっとお前だけの俺でいたい。
いたいのに。

「…………なぁ」
「何だよ」

抱かせてくれよ。

「……な…っ?」

瞳を見開くお前。
良く分からないと言いたげな顔。

「好きなんだ」
「……何度も聞いた」
「どうしようもないくらい。だから…」

今すぐにでも。
そうじゃないと、耐えられない。
辛くて、辛くて。
同じ道を歩けない事が、堪らなく恐ろしいと理解してしまいそうで。

逃げさせて。

「な…に、言って……」
「……俺の事嫌いか?」
「……っ」
「悪魔かって聞きたくなるくらい信用出来ないか?」
「違…っ!」

震える肩。
今までで一番儚げな表情。
あの強い、凛としたお前は身を隠しちまったよう。

「ストーカー野郎とは死んでもごめんか?」
「違う!」

細い腕が俺の首に絡み付く。
温かく柔らかな感触が俺の唇に当たった。


「…………お前…」
「……違ェ…って…、言ってんだろ……」

見開いた目で見た、耳を真っ赤にして俯くお前に、自然と笑みが漏れる。

「……ごめん。ありがとう」
「………ん…」

自然と唇が重なった。



「…ん…あぁ…ぅ……ぁ…っ」

ゆらゆらと揺れる腰。
潤んだ瞳。

俺の口の中の熱は質量と共に上がっていく。
それを感じて、俺の熱も高ぶっていった。

「ぁ、ティ…キ、も……やめ…」
「でもまだイってないだろ?」
「ふァ…っ!しゃべるな…ぁっ」

躯を跳ねさせて、頭を振る姿が酷く可愛くて。
態と軽く歯を立て、先端を嬲ってやる。

「やァ…っ!……ってめ…、覚…えてろ…っ」
「んー?何が?もう忘れちまったわ」
「あっ!ぁ、あァ…ん!」

快楽に震える細い躯に、絶えず上がる甘い声に。
これ以上ない程煽られる。


お前の中に入った時、何故か酷く泣きたくなった。



「………ティキ…」

掠れた声が狭い部屋に響く。
それでも強さは変わらない声が。

「俺は明日の昼にはここを出る」
「………そ、か」

細い躯が俺に寄り添って。

「……またな」

穏やかな顔。
“また”。
またがあって良いんだね。

「ああ」

涙の跡が残る頬に、口付けた。



どこまででも追いかけていくよ。
君が望まなくても。

君が君で在る限り。

流れるままに身を任せ、流れ流され着いた先は、君という美しい絶望の世界でした。


終

戯言:久々の更新になりましたが、ケータイサイト二千四百番キリリクティキユウでした。
ティキ神てティキユウって呼びたくなる…。(知るか)
ティキ神裏というリクでしたが何か裏部分が少ない。死
この話何か好きじゃない。じゃあのっけるなって話だけどねー…orz
自分で満足出来る話が書きたいです。


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