ふわりふわり。 宙を歩む。 ふわりふわり。 輝く月を。 ふわりふわり。 君と二人で。 ふわりふわり。 月面歩行。 「神田、月が綺麗ですよ」 「…別に満月でもなかっただろ」 「そうなんですけど凄く綺麗なんです」 君の部屋から見える月。 満月よりも欠けていて、半月よりも満ちている。 あの月は何と言うのか、忘れてしまった。 それでも凜と輝いていてとても綺麗。 触れたらきっと冷たくて鋭い。 そんな月。 そう言うと、君が綺麗な眉を少し顰めた。 「何で鋭いんだよ。三日月でもねぇのに」 「輝き方がそんな感じなんです。温かいって言うより冷たくて…」 「お前の考える事ってホント訳わかんねぇな」 呆れたように吐かれた息に小さく笑う。 身を乗り出して後ろから両肩を抱き締めると、 幾何かの後、そろそろと君の手が控え目に僕の手に触れた。 静寂のまま、二人で窓の外を見上げる。 空の闇が深まる程に月は白く輝いた。 鋭い、光。 「………まるで君みたいだ」 「何…?」 「綺麗で鋭い僕の光…」 振り返った君の顔が何とも言い難い表情を湛えている。 「それは俺が冷たいって言いてぇのか…?」 そう放たれた言葉は思いの外脆い響きを帯びていて。 妙に胸騒ぎがした。 「……褒め言葉ですよ…?」 「…冷たいがか?」 冷血人間。 君がそう呼ばれている事は知っている。 それは当の本人すら承知している事で。 それは本当の君を理解していない思慮のない人間が言う事で、君が気に掛けるような事ではない。 それでも、君も温かい血の通った人間だから。 気に掛けていない振りをして、本当は奥底で傷付いている。 今だって。 冷たいという何気ない言葉に、過剰に反応する君。 愛しくて切なくて。 脆い君が。 僕も君を蔑んだと思われた事が。 「神田のばか…」 「……何?」 抱き締める腕に力を込める。 君が息を詰める音が聞こえた。 「僕の言葉くらい素直に受け取って下さい」 僕だけは。 僕だけは信じて。 それは独占欲である事は知っている。 弱いところを逃さず突いた卑怯な手である事も知っている。 でもこれは紛れもない僕の本音。 僕は君に全て差しを出したいから。 だから君の全ても僕にちょうだい。 その言葉は奥底に封じて。 ただ君を抱き締めた。 「…………馬鹿はお前だ」 小さく君の声が僕の鼓膜を叩く。 「俺は光なんて大層なもんじゃない」 それは僕じゃない、自分自身に言い聞かせるような。 それ程小さく呟かれた言葉だった。 「光です」 どこまでも白く凛としている。 強く鋭い。 何よりも綺麗な月光。 「救い様のねぇ馬鹿だな」 「何とでも」 抱き締める力を強めると、君がより僕に背を預けてくれる。 鼻を擽る石鹸の匂い。 頬に当たるサラサラとした髪。 口許が自然と緩んだ。 「…あーあ、何かお腹空いちゃいました」 「食堂行け」 「一緒に行きましょ?」 「…………っ…仕方ねぇな…」 渋々腰を上げてくれる君に目を細めて。 もう一度だけ窓の外を見た。 白く輝く小さな月。 「……ねぇ神田。月に行きたくないですか?」 「はぁ!?」 君と二人。 あの綺麗な場所へ。 「絶対すて…」 「馬鹿も休み休み言え」 「ちょ…馬鹿って酷い…」 ロマンチックじゃないですか。 どこがだよって冷たく一蹴されたけど。 自分でも突拍子もない事この上ないけれど。 行きたいと確かに思ったんだ。 君と二人で。 あの白い月に。 「オイ」 「今行きますってば」 ふわり。 ふわり。 終 戯言:あー…何か全くリクエストに沿ってない気がする…orz ケータイサイトの9200ヒットキリリクで死た。 こんなのが日常会話とか嫌過ぎる。 もう二人がキモくてすみませ…っ 凄く意味わからん話…(いつもじゃん) いやちょっと月面歩行って使ってみたくて無理やり書いた感が…(最悪) BACK