僕の名前はアレン・ウォーカー。犬です。
あ、いや、下僕とかそういう意味じゃなくて。
白いふわふわの耳と尻尾がチャームポイントの可愛いわんわんです。

飼い主のクロスさんはまだ生後一か月だった僕に新聞をポストからリビングまで
引き摺らずに取ってくるようにとか無茶苦茶な事を言ったりする、かなりのキチ
ガ…スパルタです。
お陰様で今ではかなりの芸達者な可愛いわんちゃんで通ってます。
まぁこれはスパルタ教育の賜物と言うより、僕自身の才能によるものだと確信し
ていますが。

さて、そんな人気者の僕には沢山の遊び仲間がいます。特に彼等に興味はないか
もしれませんが聞いて下さいね。

まず一匹目。こっちにガン飛ばしてる黒い物体が見えますね。
彼の名前は神田ユウ。猫です。
いや、そういう意味じゃなくて。
つやつやの毛並みや、ぴんとした尻尾がとても可愛い黒猫さんです。
でも良いのは外見だけで実はとんでもない凶暴性を秘めています。
いや、秘めているというかむしろ垂れ流しです。
容姿に騙されて迂闊に近付くと自慢の爪でぶった斬られます。
引っ掻くんじゃなくてぶった斬られます。
まるで食虫植物みたいな猫です。あ、やべこっち来た。地獄耳め。


生命の危険を感じたので次行きます。

今まさに食虫植物に引っ掛かった赤い物体が見えますかね。
彼の名前はラビ。兎です。
…どんな意味もねぇなこいつは。
最近キレると収拾がつかなくなると発覚した万年発情期の赤毛兎です。
食虫植物神田が大のお気に入りらしく毎日飽きもせずユウユウユウユウ言ってま
す。
お陰でいつも彼は全身傷だらけです。
一説によると、彼の眼帯は神田に目潰しされたから装着しているのだそうです。
なんとも愚かで哀しい生き物です。

さて、今日遊び場に居るのは僕含めて三匹です。
そう、プリティー僕とバーサーカー神田とフーリッシュラビの三匹です。

はっきり言って最悪の組み合わせです。
この二匹は高尚な僕の趣味に全く理解を示さない野蛮族なんです。
神田は暇さえあれば爪研ぎしてるしラビは暇さえあれば神田にボコボコにされて
るし。
玉乗りとかフリスビーとか、そういうエレガントな事出来ないんですかね、奴等
は。


今日は梅雨の晴れ間と言うんでしょうか、珍しくさっぱり晴れた良いお天気です
。
こんな良いお天気なのにこいつ等と一緒だなんて、とことんついていません。
今も癇癪を起こした馬鹿猫が発情兎に鉄拳制裁を与える不快な破壊音と、何度返
り討ちされても懲りない物好きの断末魔の叫びが…

………アレ?

やけに静かな公園に、僕は思わず奴等の方を向きました。
その先には木陰の下のベンチがあって。

「…どうしたんですか?ラビ」
「シーっ、ユウが寝ちまったんさ」

暇だし、少し気になって駆け寄ったベンチには、狂戦士神田がぐてーっとだらし
なく寝ていました。
そうか、こいつ暑さに弱いんだ。

物珍しさに思わずまじまじとその寝顔を眺めてしまいました。
木陰とはいえ暑い事に変わりはなく若干眉を寄せてはいますが、その姿は普段の
凶暴な彼からは全く想像出来ません。
あのキツい瞳が閉じられると、何とも儚げで、可愛く見えるのです。

ん?ちょっと待て僕。

可愛い?
あの神田が?
食虫植物でバーサーカーで癇癪持ちで自己中で相手の話を聞かなくて頭が弱いあ
の神田が?
ありえない。
いくらなんでもありえない。

こんな血迷った考えは今日の暑さの所為だ。
僕も疲れてるんだな。今日は早めに帰らなくちゃ。

「ん…」

びくりと肩が跳ねました。
何だよ驚かすなよ。「ん…」じゃねぇよ。何可愛い声出しちゃってんだよ。
…………可愛い声?

ありえないありえないありえない!
見るな!アレを見るんじゃない僕!
アレは今世紀最大の魔獣だ!化け猫だ!
って何で口唇がうっすら開いちゃってんだよ!
暑いからか?暑いからか?
何あのマウストゥマウスカマンみたいな口唇!
こんなのあの発情兎が見たら速攻奪われちゃうじゃないですか!
ちょ、危ない。危ないですから!

「何つー顔してんさアレン」
「へ…っ!?」

あまりに冷めた言葉を投げ掛けられ、僕は我に返りました。
その言葉の主を見れば台詞通りの呆れ顔。

「え…あ、いや…これは…っ」

突然の事に言葉が詰まる僕に奴は心得たとばかりに笑みを浮かべました。

「……ほほーう…アレンも漸くユウの魅力に気付いたかぁ…」
「ち…っ違います!誰がこんな凶暴猫…!」
「デレデレした顔で眺めちゃってさぁ…キュンってきてたんだろ?」

ニヤニヤと下品な笑いを浮かべる兎に、テメーと一緒にするなと怒りが込み上が
ります。
冗談にも程があります、こんなの。
こんなの、絶対ありえない。
なのに何を勘違いしたのかアホ兎はうんうんと感慨深げに頷いて。

「ま、これで俺らは晴れてライバルになった訳さ」
「だから違いますってば!」

違います。断じて違う。

「んじゃま、奥手なわんわんはすっこんでるんだな」
「な…っ!」

嫌な笑みを浮かべる奴は完全に僕を挑発しています。
その事に無性に腹が立つのは馬鹿にされたからだ。
神田が好きだからじゃない。

僕は心の中で何度もそう繰り返しました。
しっくりこなくても無理やり繰り返しました。

夏の暑さは正常な思考を狂わせる。
心の中で起き始めた矛盾は、きっとこれからどんどん大きくなるのでしょう。


でも。
明日からまた雨だそうです。
出かける前にクロスさんが天気予報を見て言っていました。

これで暫く神田に会わずにすむ。
また晴れた時は、その頃にはきっと。
僕は神田が大嫌いだと思います。


終

戯言
当サイト14000番キリリクで犬アレンVS兎ラビ×猫神田(半分自覚なし)でした。
メルヘンなタイトルの割りにアレン様が凶悪ですみませんorz 
あんま意識する前的なご要望でしたのでちょっと原作寄りにしたかったんですが極端過ぎた気がします。
書いてる途中に本場星野アレ神が見れて拍車がかかったかなーとか。死。アレ神万歳。
緋翠様、こんなものでよろしければ受け取ってやって下さい。
14000ヒットありがとうございました!       


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