小さな雲が一つだけ。
青空にぽつりと浮かんでいて。

仲間においていかれたみたい。
流れに乗り遅れてしまった可哀想な雲。

掬い取って仲間の元に帰してやれたら。


くるりくるりと回る空。



この木の上は俺の特等席。
一際しっかりした枝に腰を下ろして足をぶらぶらさせて。
食堂からこっそり頂いたおやつを食べる。

うん、良い気分。

うるさいパンダはここを知らない。
きっとコムイだって知らないさ。

教団の森がほとんど見渡せて。
空には手が届いちまいそうで。
心なしか空気もうまい。
最高の場所だ。
俺様だけの秘密の特等席。


「ふぃー…」

今日も木に登って空を仰ぐ。
真っ青な空に目がチカチカして、さっきまで暗い部屋でずっと本読んでたもんなぁと苦笑い。

今日ジェリーちゃんに貰ったのはマドレーヌだ。
しかも奮発して貰って二つ。
一つ目を豪快に二口で食べきって、口の中に感じる甘さに満足して一息吐く。

もう一つを今度はちまちまと食べようと控え目に口を開けて。

「…あり?」

下に誰かが来る気配を感じた。

「こんなとこに来る奴なんかいるんさ…?」

マドレーヌを膝に乗せて木の下を見やると、
長めの黒い髪の奴がとことここの木に向かって歩いてきたのが見える。

「……子供…?」

然程大きくない身体は確かに子供で。
それも俺と同じくらいの。
この教団に俺と同じくらいの奴なんてリナリーくらいだけだと思ってたのに。
同じ黒髪でもリナリーじゃない事だけははっきり判って。
ムクムクと好奇心が湧いた。

「なぁ!こんなとこに何の用があんさ!?」
「っ!?」

大声を張り上げてやると弾かれたようにそいつは顔を上げた。
切れ長の目が大きく見開かれているのが良くわかる。

「…へぇ…結構なべっぴんさんさぁ…」

高い位置からでも確認出来る程整った顔に感嘆の息を漏らして。

「ちょっと待ってて今そっち行くから!」

膝のマドレーヌを再び包んでポケットに突っ込むと、結構な高さにも構わず飛び降りた。
勿論着地は百点満点大成功。

唖然とする見慣れない顔ににっこり笑いかけてやる。

「ども。ハジメマシテ」
「………」

目をぱちくりさせたまま動かない相手に小さく首を傾げて。

「…もしかして英語わかんねぇ…?」

自分でもまさかと思いながらも。
それでも見慣れない黒髪に一抹の可能性を感じつつ。
まっすぐにその反応を見つめた。

「……ぅ…、あ…」
「わかんないんだ…」

困ったように眉を寄せあたふたと声を発する姿にそう結論付ける。
見慣れなさといい、ここへ来てまだ相当日が浅いようだ。
それでも俺の口は自然と笑みを作り、目も細められる。

「大丈夫さ。俺が何とかしてやるよ」
「……?」

笑みを深めて自分より少しだけ低い位置にある頭を撫でてやると、
少しむっとしたのか首を傾げながらも口がへの字に結ばれた。
その様子に更に笑みが漏れる。



「俺はラビっていうんさ。わかる?ラビ、さ」
「………ラビ…?」
「そ!よろしくな?」

こいつの国の言葉はわからないけれど、ボディランゲージは得意中の得意だ。
身振り手振りで何とか名前を伝える。
綺麗な口唇がたどたどしく紡いだ俺の名が嬉しくて。

「お前は、何て、名前、なんさ?」
「………ぁ……ユウ…」
「ユウ?いー名前さぁ!」

俺の言葉は何とか相手に通じているらしく、ぎこちなくはあるけれど確かに会話が成立していた。
比較的探したらどこの国にでもありそうな名前に、
外見から東洋人だろうという事しか判断出来なかったけれど。

俺の小さな溜め息は真っ青な空や生い茂る森に瞬く間に吸い込まれた。

「ユウはさ、いつ、ここに来たん?」
「……?」
「一人で来たんか?…んな訳ないか」
「ひとり…」
「へ?」

呟かれた言葉に少しだけ驚いて、まじまじと端正な顔を見つめる。
一方的に俺が話す事に頷いたりするだけだったユウが、単語でぽつりぽつりと話し始めたのだ。

「…ひとり…いない、だれも…」
「……ユウ?」
「よる…くらい……だけど、ひとり」

すぐにわかった。
こいつは酷く重たいものを背負ってる。

そして後悔した。聞くべきじゃなかったと。
ユウが発する声が悲愴で儚気で、今にも泣き出してしまいそうだったから。

「…ひとり…」
「ユウ!」

尚も言葉を続けるユウを抱き締めたのはいたたまれなかったから?
ただ聞きたくなかったから?

何にしてもこれ以上、こんな言葉を綺麗な口唇から紡いで欲しくなくて。

「ラビ…?」
「ユウ…ユウは一人じゃないよ…」
「?」

ここにいれば皆がいる。
俺がいる。
一人じゃない。

抱き締める腕に力を込めた。

「ユウは一人じゃない…!」
「……ひとり…じゃない…?」
「そう、一人じゃない」

抱き締めた細い身体が小さく震える。
思わず身体を離すとそれはそのまま崩れるようにその場にしゃがみ込んだ。

「ユウ…」
「…っく……ぅ…っ」
「泣くなよ…もうユウは泣かなくて良いんさ」

同じようにしゃがみ込んで目線を合わせて微笑むと、くしゃりと端正な顔が更に歪む。

「あーっ!余計泣かせちまった…!」

初対面なのにと途方に暮れて叫ぶ俺。
ふと、自分のポケットが膨らんでいる事に気付いた。

「…あ…」

即座にポケットに手を突っ込むと、しゃくり上げるユウの肩にぽんと手を置く。

「…?」
「これ、食うと良いさ」
「…なに…?」

差し出したマドレーヌに思わず泣きやんで首を傾げる相手に笑いかけて。

「ホラこれ、この木。俺のとっておきの場所なんだけど特別にユウも招待するさ。そこで食べよ?」


二人で登った木は、それでもしっかりと俺達を支えてくれる。
口にした洋菓子の甘さに、初めてユウははにかむように微笑んだ。

「ユウ…俺らさ、友達だよな?」
「…ともだち?」
「俺がずっと一緒にいるさ」
「…ん…いっしょ…」


青空の下微笑んで手を繋いだ時、大きな風が一度だけ吹いて、小さい雲を運んでいった。


終

戯言:………んーと…何て言うかごめんなさい。
ラビユウ過去捏造話で死た。
何かね、ユウたんがキモいね。
ホラアレ。当時はまだ可愛かったかただ英語話せないからあんなんだっただけなのか。
個人的に後者です。死笑
まぁ…字数的な問題で所々切っちゃったんで話が繋がらない繋がらない。死
いつにも増して意味不明駄文ですみません…orz
タイトルはポルノの曲から貰いました。…分かるか…。
この歌個人的に超萌えソングです。
アレ神でもいけると思う。(コルァ)
あんま本編に関係なかった気もしますが。死
    

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